田舎町の、小さなビストロで、
今日も私は丁寧にグラスを磨き、
静かに開店の準備を整える。
先日、初めていらした東京からのお客様にこう言われた。
「ワイングラス、ちゃんとしてるね。笑」
ああ、そう。
その言葉にこめられた、微かな驚き。
私は聞き逃さない。
それをマダム悠華は、笑顔で受けとった。
きっと、そのお客様にとって田舎の飲食店とは、
どこか「そこそこで十分」と思われていたのかもしれない。
妥協の延長線上にあるような、そんな場所だと。
でも私たちは違う。
田舎であろうと、都会であろうと、
誰に見られていようといまいと、
一脚のグラスに、
一皿の料理に、
惜しみない手間と愛情を注いでいる。
それは、
誰かに評価されるためではない。
場所に合わせて手を抜くことはしない。
東京だとか北海道の田舎だとか・・・。
どこにあっても、
どんな季節でも、
どんな客層でも。
ただ、自分たちが信じているものに、
静かに誠実でいたいだけ。
自分たちが心から納得できるものを
毎日静かに、積み重ねている。
ただ、それだけ。です。
「ワイングラスちゃんとしてるね」
その言葉の裏に、
私たちの仕事が正しく伝わったことを、
少しだけ、誇らしく思う。
都会の基準でもなければ、
派手な流行でもない。
ただ、ここに流れる穏やかな時間を、
大切にしているのです。
なぜなら、私は北海道を愛しているから。
だから今日も、
その愛した北海道に恥じないよう
透き通ったグラスに、
きちんと磨いた誇りを注いでいる。
owner sommelière オーナーソムリエール
madam 悠華
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