伊勢丹の放置プレイに、学ぶこと

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声をかけない接客が、なぜか心をつかむ理由

以前、ある有名な方が、
あるブティックの接客についてSNSでちらりと語ったところ、
ちょっとした炎上騒ぎに。
結果、投稿はご自身で削除されたことがありました。

マダム、そのことについて語ります。

ウィンドウショッピング

それは本来、静かな時間の娯楽。
心の深呼吸。
心のメンテナンス。
おしゃれな服を見ながら、
今の自分のテンションを確かめる
まるでファッションという名の精神鑑定。

お気に入りのショップにふらりと立ち寄った瞬間、
忍者のごとく背後に現れるスタッフさん。
「あ、それ可愛いですよね〜♡」
「人気なんですよ〜!」
「私も持ってるんです〜!」

・・・・。

私:「えっと、ありがとう(笑)・・・・。」汗。

一歩進めば一歩下がり、目をやればそっと微笑む。
その距離感は…まるで舞踏会のペアダンス。

もちろん、売る側の
数字とか上司からのプレッシャーとか
締切に追われるとか、
売り上げを作らなきゃならない日々戦場な事情なのもわかる。

でも正直、心の中ではこうつぶやく人多いかも。
「可愛いかどうかは、私が決めるから・・・。ごめん。」
「お願いだからもうちょっと離れてほしい。」
「私の気持ち」と対話し商品を選びたい。
必要な時に呼ぶのでその時は、
アシスタントしていただきたい。
自由に泳がせてほしい。
自由に見せて欲しい。
私だって商品買ってお金落として社会貢献したい。

商品が素敵でも、
服を手に取るたびに話しかけられると、
気分は尋問されてる感じ。

心が閉じて
結果、「今日は見るだけにしようかな…と・・・。」そっとお店を出る。
ことになる。

あのコート、本当は気になっていたのにな。

 

一方で、老舗百貨店のプロフェッショナル。
三越、伊勢丹、大丸あたりの店員さんは「間合い」で攻めてくる。

たとえば、ある日の伊勢丹。
ふらりとコート売り場に足を踏み入れた瞬間、
店員さんは遠くからにっこり。
何やら他にお客様誰もいないのに
ちょっとだけ忙しそうにしてるのが妙に安心する。

手を止めて話しかけてこない。
こちらが商品を手に取っても、
あえて近づいてこない。
話しかけてこないのに、話しかけられてる気もする。
放っておかれてるのに、放っておかれてない気もする。
この矛盾を感じさせるスキルが
もはや宗教の域。

「気になるものがあれば、ご試着なさってくださいね」・・・それだけ。

私が鏡の前で合わせていると、
「その丈感、絶妙にお似合いですね」と一言だけ言い残し、
またすっと離れる。
なんという放置プレイの妙技。

それでいて、
こちらが何を手に取ったかはしっかり見ている。

いざ、お買い上げの決意が決まると
まるでエスパーのようにサイズを確認し
在庫をサッと出してくる。
この「引き」の接客。

まるで“誘導される”のではなく、
心が自然と動いてしまう”感じ。
これぞ魔法。
この魔法を学びたくて
私は、都会の街に出るたびに
この接客に触れたくなる。

ワイン売りの私にとって、
この距離感と気配の美学は、
仕事のヒントでもあるから。

伊勢丹のワイン売り場や、
渋谷109のカリスマ店員さんの
気配だけで買わせる見えない営業の凄腕スタッフには
いつも会いに行きたいと思う。

特に大人の女性たちが求めているのは、
「買わされること」じゃない。

魅力を見つける自由。
気持ちを整える時間。
心地よい間合い。

それがあるからこそ、
すんなりと心に入ってくる接客は、忘れられない。

声をかけないことが、最大のホスピタリティ。
売り込まないことが、最大の営業。

だって、商品はだいたい素敵だから。

 

 

 

店員さん、今日もニコニコありがとう。
だから私は、今日も“買う気で”立ち寄るのです。

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